『Neuroimage: Clinical』に論文が出版されました

『Neuroimage: Clinical』に共著論文 “Impaired perception of illusory contours and cortical hypometabolism in patients with Parkinson’s disease” が掲載されました。

本研究はパーキンソン病(PD)による腹側形態知覚処理に関わる高次視覚皮質機能低下がPD患者の主観的輪郭(輝度や色の変化が輪郭線に沿って生じていない状況で輪郭が知覚される錯視)を知覚する能力低下を示すという仮説を検証しています。PD患者群と健常対照群に対してカニッツァ図形で形成された主観的輪郭(カニッツァ型主観的輪郭)と,整列した線分の端点で形成された主観的輪郭(整列した線分型主観的輪郭)の刺激を用いて、知覚に必要な刺激提示時間を測定し比較しました。また、PD患者の主観的輪郭知覚能力低下と大脳の安静時糖代謝の低下との関係性をFDG-PET画像をボクセルごとに全脳で解析しました。結果、PD患者は健常対照群と比較してカニッツァ型主観的輪郭の知覚に要する提示時間の延長を認めました。このPD患者のカニッツァ型主観的輪郭の知覚機能の低下は、腹側形態知覚処理に関わる高次視覚皮質に含まれる下側頭回後方領域の糖代謝低下と相関していました。本研究の結果は、PD患者に主観的輪郭を知覚する難しさがあることを明らかにし、PD患者の視覚障害には高次視覚皮質機能の低下が関与した視知覚の問題があることを示唆しています。本研究の神経心理学的知見は、ヒトの主観的輪郭の知覚に高次視覚皮質領域が関与しているという機能的神経画像研究の見解を支持する成果となりました。

Ishioka T, Hirayama K, Hosokai Y, Takeda A, Suzuki K, Nishio Y, Sawada Y, Abe N, Mori E (2021)
Impaired perception of illusory contours and cortical hypometabolism in patients with Parkinson’s disease
Neuroimage: Clinical 32: 102779