『Journal of Experimental Social Psychology』に論文が出版されました

『Journal of Experimental Social Psychology』に共著論文 “Are implicit attitudes toward dishonesty associated with self-serving dishonesty? Implications for the reliability of the IAT” が掲載されました。
 本研究では、不正直さの抑制要因として、潜在的態度と遂行機能の個人差に焦点を当て、行動実験を実施しました。まず研究1では、実験参加者に対して、嘘に対する潜在的態度を測定する潜在連合テストと、遂行機能を測定するワーキングメモリー課題を実施しました。また、コイントスの予測の正誤に関して嘘をつくことで、自己あるいは他者が金銭的な報酬を獲得もしくは損失を回避できるコイントス課題を実施し、嘘をつく割合と潜在的態度及び遂行機能との関連を分析しました。その結果、嘘に対する否定的な潜在的態度が強い個人ほど、嘘をつくことで自身の損失を回避できる条件において、より正直にふるまうことが示されました。ただし、この効果は統計学的には有意傾向でした。一方、嘘をつくことで他者の損失を回避できる条件では、潜在的態度との関連はみとめられませんでした。また、遂行機能との関連は、自身及び他者の報酬獲得及び損失回避に関する嘘のいずれの条件においても、みとめられませんでした。追加実験として行った研究2においては、研究1と同様に、嘘に対する潜在的態度と、自身の損失回避場面における嘘をつく割合との関連が有意傾向でした。これらの結果から、嘘に対する潜在的態度が、損失回避場面における利己的な嘘を抑制する要因として機能する可能性が示唆されましたが、慎重な解釈と今後の追加的な検証が必要と考えられます。

Hatta H, Ueda R, Ashida H, Abe N (2022)
Are implicit attitudes toward dishonesty associated with self-serving dishonesty? Implications for the reliability of the IAT
Journal of Experimental Social Psychology 100: 104285