『Cerebral Cortex Communications』に共著論文 “Neural representations of death in the cortical midline structures promote temporal discounting” が掲載されました。
本研究は死が関連する出来事を想像することによって時間割引(時間経過に伴い、報酬の主観的価値が減衰する)が促進する現象の背景にある認知神経基盤について検討しました。実験参加者は、画面に呈示された2つの選択肢(A:すぐもらえる少額報酬 vs. B:一定の遅延時間の後にもらえるAよりも大きい報酬)を比較し、どちらか1つ好ましい方を選択する課題を行いました。各選択肢が提示される前に、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブ、死関連の出来事の文章を呈示し、参加者には将来自分自身に起こり得る出来事として想像するように教示しました。参加者が想像している際の脳活動を解析した結果、特に、大脳皮質正中内側部構造における脳活動パターンによって、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブ、死関連の出来事を識別できることがわかりました。このとき、死関連出来事とネガティブな出来事の識別精度の高かった参加者ほど、死を想像した後の時間割引が促進しやすいことも明らかとなりました。本研究の結果は、死関連の情報処理が大脳皮質正中内側部構造において行われ、それらの情報が時間割引のような報酬選択を調整していることを示唆しています。
Yanagisawa K, Kashima ES, Shigemune Y, Nakai R, Abe N (2021)
Neural representations of death in the cortical midline structures promote temporal discounting
Cerebral Cortex Communications 2 (2): tgab013